アラウンド・チャイナ

ガイドブックにはあまり載らないニッチな中国旅行指南

中華料理の源泉を求めて!四大菜系の首・山東料理を味わおう!

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孔府菜の代表料理・一品豆腐

 中華料理と一口に言っても地方ごとに特色があり、それこそ星の数ほど存在するが、大雑把に括ってしまうと、四大菜系(菜:cài=ツァイは料理のこと)に分かれるらしい。

粤菜(yuè cài)ユエツァイ:広東料理

川菜(chuān cài)チョアンツァイ:四川料理

苏菜(sū cài)スーツァイ:江蘇料理

鲁菜(lǔ cài)ルーツァイ:山東料理

 最初の2つは納得だろう。広東料理といえば、フカヒレ、ナマコ、ツバメの巣など、いわゆる高級料理の代名詞だし(多分に香港の影響が強い)、四川も辛いイメージはあるが、以前、当ブログでも紹介したように麻婆豆腐、ホイコーロー、担々麺など日本になじみのある料理が多い。

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 3番目の江蘇料理はあまりピンとこないが、上海料理といえば「あぁ、知ってる」となるハズ(上海は特別行政区になる前は江蘇省の一部だった)。上海蟹やトンポーローなどは、江蘇・浙江料理となる(小籠包は厳密にいえば上海料理ではない)。

 そして最も馴染みのないのが山東料理だ。そもそも中国に詳しくない人にとっては、山東省という省があることすら知らないかもしれない。山東料理は北京料理の源流で、清朝の時代は宮廷料理人の標準語は山東語だったと言われているが、しかしながら、首都には様々な都市から文化が流れ込んでくるから、山東料理=北京料理だとは言い切れない。実際、最も有名な北京料理である北京ダックの源泉は、南京料理(江蘇料理)であることは以前、当ブログでも述べた(山東料理にも済南烤鴨という料理があり、北京ダックとほぼ同じ食べ方をするが、いずれにせよその元となったのは南京の鴨料理で間違いないと思われる)。

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 ということで、山東料理のなんたるかを知るためには現地に行けば手っ取り早いということで、山東料理の代表格である済南菜(jǐ nán cài:ジーナンツァイ)と孔府菜(kǒng fǔ cài:コンフーツァイ)を実食してみた。

 

●済南菜

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九轉大腸

 山東省の省都・済南の料理は味が濃厚で、豪快な料理が多いのが特徴。中でも有名なのが、「九轉大腸」だ。豚のホルモンをそのまま輪切りにして、濃厚な醤油ダレで炒めただけというシンプルな料理。ホルモン独特のネチャネチャした食感が特徴で、味がすごーく濃く、まさしく「ザ・酒の肴」といった料理だ。

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ぜひ地元のビール「趵突泉啤酒」と合わせたい

 しかし、これが北京料理の源泉だと言われても、「んー、そうか?」という感じなのだが(北京でこんな料理見たことない)。

 ちなみに済南料理といえば、もうひとつ「糖醋鯉魚」という料理が有名らしい。

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每日頭條 糖醋鯉魚—風味傳奇之魯菜尋源 https://kknews.cc/food/6qba6oq.html

 ふむふむ、蘇州料理の松鼠桂魚(魚を揚げてケチャップで味付けした料理。松鶴楼という老舗のレストランの名物料理)に似ている。でも、やっぱり鯉は抵抗があるのよね。

 ちなみに済南の美食街といえば芙蓉街。市中心部にあって観光に便利。

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小吃が楽しめる店が並び、なかなかおもしろい

 写真を見るとトルコ料理にタイ料理と随分国際色豊かな料理が並ぶが、もちろん山東料理も味わえる。「山東菜」もしくは「魯菜」と書いてある店に入ろう。ちなみに、今回入ったお店はコレ。

goo.gl

 別にオススメではないので、ご参考までに。

 

●孔府菜

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孔府豆腐

 済南菜は豪快な料理で、北京の宮廷料理とは程遠かったので、今度は曲阜の孔府菜を試してみる。曲阜の回でも書いたように、孔廟は皇帝が参拝した儀礼の場。孔廟も宮廷建築だし、そういった意味ではいかにも北京料理の源流っぽい。早速、孔府菜と旗が掲げられているお店に入ってみた。

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孔廟の入り口側にある孔府宴特色菜

 孔府菜の名物料理は豆腐らしい。で、「孔府豆腐」といかにもな料理を頼んでみると、出てきたのが冒頭の写真の料理。んー、上海の定食屋でよく見るフツーの料理なんだけど。これって宮廷料理なのか?

 また、孔府長寿菜という、なんとも縁起の良い名前の料理もあったので注文したのだが…。

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孔府長寿菜。長寿菜とは野菜の名前だった

 考えてみたら、庶民的な佇まいだし、値段も安いし、入った店を間違えたかも。ちなみに、高級店で食べる孔府菜はこんな感じらしい。

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百度百科 https://baike.baidu.com/item/%E5%AD%94%E5%BA%9C%E8%8F%9C/1246929?fr=aladdin

 …豆腐も長寿菜もありませんけど。でも、やっぱり北京料理とは少し違う気もする。

 ちなみに孔府菜は和食やキムジャン料理、地中海料理などが登録されている世界無形文化遺産の登録を目指しているらしい。

www.excite.co.jp

 

 このように山東料理の印象を一言で言えば地味。四川が辛いとか、江蘇が甘いだとか、広東が豪華だとか、そういうわかりやすさがないのである。もうひとつ、なぜ地味だと感じたのかといえば、どの料理も中国全土でよく見る料理だからだ。孔府豆腐はその典型だし、糖醋鯉魚も江蘇料理ではよく見る味付け(松鼠桂魚のほか、鎮江では糖醋排骨が有名)。九轉大腸は特徴的な料理だが、とはいえホルモン料理は珍しいものではない(単に輪切りをしただけという豪快感のみが特徴)。そこで、ハタと気がついた。そう、山東料理は中華のベースなのではないかと。

 思えば、山東地方は中原と呼ばれる地域に近く(中原はいまの河南省)、いわば中華の源泉を担ってきた地方だ。中国の歴史は分裂と統一の繰り返しで、同時に文化も離散と集合を繰り返す。山東料理も長い年月をかけ、地方に伝達していったと考えられる。その上で、例えば四川では保存や臭み消しに麻辣を加えたり、広東や福建の沿岸地方では海鮮を取り入れるなど、独自発展を遂げた。そう考えると、山東料理に特徴がなく、地味なのも、当たり前の話だと言える。

 ということで、中華料理の源泉を味わうなら山東こそが相応しい。もっとも僕は、源泉よりもアレンジを加えた四川料理や広東料理の方が好みなんだけど。

 

<今日の中国語>

济南菜(jǐ nán cài)ジーナンツァイ

九转大肠(jiǔ zhuàn dà cháng)ジュウジョアンダーチャン

糖醋鲤鱼(táng cù lǐ yú)タンツーリーユー

孔府菜(kǒng fǔ cài)コンフーツァイ

孔府豆腐(kǒng fǔ dòu fu)コンフードウフ

孔府长寿菜(kǒng fǔ cháng shòu cài)コンフーチャンショウツァイ

 

 

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