アラウンド・チャイナ

ガイドブックにはあまり載らないニッチな中国旅行指南

日本の中華とこんなに違う!本場・成都で四川料理を食べ比べ

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陳麻婆豆腐の金牌麻婆豆腐

 中国に興味を持つ外国人は多いが、特にニッポン人の場合、三国志が入り口というパターンが少なくない。三国志にたいして興味のない当ブログにおいても、赤壁に近い武漢のフェリーに無錫の三国城と、三国志ゆかりの地を避けては通れなかったわけだが(ゆかりといえるかわからないが)、やっぱり三国志の聖地といえば蜀の都・成都(chéng dū:チェンドゥ)だよねということで、今回から3回に分けて成都の観光スポットを紹介することにする。

www.morientes.jp

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 といっても、ストレートに武侯祠の紹介をするはずもなく、独善的に成都に行ったら外せないものを3つチョイスしてみた。四川料理に伝統芸能、そしてパンダである(結局、三国志関係ない…)。ということで、今回は四川料理について取り上げることにしたい。

 さて、日本で中華料理といえば、ひとつのジャンルだが、中国では一口に「中華」というジャンルは存在しない。地域ごとに料理があり、使う食材も調理法も全く違う。それを全部列挙するのは不可能なので、ここでは便宜上、四大菜系と呼ばれている料理をまずは挙げたい。鲁菜(lǔ cài:ルーツァイ)、粤菜(yuè cài:ユエツァイ),淮扬菜(huái yáng cài;ワイヤンツァイ)、川菜(chuān cài:チョアンツァイ)の4つである。

 んー、全然ピンとこない!

 鲁は山東省のことで、要は山東料理のこと。日本で山東料理といっても全く響かないが、中国ではいわば定番料理(中華のベース的な料理)。実はナマコやフカヒレも、山東料理の食材だったりする。

 粤菜は日本人がよく知っている料理で、いわゆる広東料理。日本で広東料理が有名なのは、やはり香港の影響。広東料理が高級といわれるのは、中国で高い食材として知られる海鮮をふんだんに使うからに他ならない。海鮮の他は豚や鳥の炙り料理が有名だ。

 淮扬菜だが、淮は江蘇省から安徽省にかける長江流域、扬は揚州のことで、江蘇料理上海料理がこれに含まれる。あっさりした味が特徴で、川魚料理は少々泥臭い。当ブログ読者ならご存知だろうが、中華で一番美味くない料理だと個人的には思っている。

 最後は少し飛ばして、四大菜系には含まれないが、中国ならどこでもある料理として、闽菜(mǐn cài:ミンツァイ)、湘菜(xiāng cài:シャンツァイ)を入れておきたい。闽菜と聞くと耳馴染みがないが福建料理のこと。台湾の料理がいわゆる闽菜なので馴染みのある味。一方、湘菜は湖南料理で激辛料理としてお馴染みである。

  さて、四大菜系の最後にあげられるのが川菜、四川料理だ。実は日本で中華というと広東料理や福建料理の影響が強いと思いがちだが、日本で著名な中華料理のほとんどは実は四川料理である。これは陳健民(料理の鉄人でお馴染みの陳健一さんのお父さん)の影響で、四川出身の彼が、地元の料理を日本人の舌に合うようにアレンジして広めた功績が大きい。したがって、四川料理といえば聞き馴染みのある料理が多いが、アレンジしすぎて全く異なる料理となっているため、観光客は面食らうことが少なくない。そこで、いくつか例を挙げてみよう。

 

●麻婆豆腐

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麻婆豆腐

 最近は「花椒(huā jiāo:ファージャオ)」が流行りで、日本でもだいぶ本場の味に近づいたものがでてきたが、いわゆる日本でよく見る麻婆豆腐と四川のものはまるで別物。日本では豆板醤(中国のものとは全く異なるもの)に甜麺醤を入れたりするようだが、四川では乱暴な言い方をすれば、豆腐をラー油にぶっこみ、瓶の蓋が外れた?と疑うほど大量の花椒をふりかけたもの。豆腐は汁を吸いやすいので、逃げ場がないほど辛く、それ以上に花椒のせいで舌が痺れる。これがいわゆる麻辣(má là:マーラー)の状態。三口ほど口に入れると、もはやなんの食材を食べているかわからないほど、痺れる。

 

●回鍋肉(ホイコーロー)

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回鍋肉

 日本では豚肉をキャベツとともに炒めた肉味噌炒め的な料理になっているが、四川の場合、そもそもキャベツは使わず、ニラを使う。ニラと豚のバラ肉(日本の薄切りのものではなく少々厚めに切ったもの)を炒め、最後に豆板醤をぶちこんで完成。先にも言ったが豆板醤は日本のものと異なり、ラー油に豆板が混ざったものと理解すればいい。ちなみに豆板醤は時間をおいて発酵が進むと辛味が減ってしまう。その場合、新しいものとブレンドして使うと辛さはキープしたまま、深みのある味わいになる。ちなみに四川の味付けは全て麻辣なので、これもまた途中から肉の味がわからなくなる。

 

●担々麺

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担々麺

 日本では専門店ができるほどの人気だが、本場・四川の担々麺とは全く別次元のものになっている感がある。日本の担々麺は味噌味で味に深みがあるが、四川の担々麺はラー油に麺をぶちこんだだけのシンプルな作りのため、味の深みもへったくれもない印象。食べる際に混ぜて食べるのだが、麺をすする際にラー油をそのまま飲み込んでしまうため、とにかく涙が出るほど辛い。ちなみに、四川の担々麺はシンプルなだけに、大抵10元(約150円)以下で食べられるのが嬉しい。

 

●鶏のカシューナッツ炒め?

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辣子鶏

 中華街でよく見かける鶏のカシューナッツ炒めは、おそらくこの辣子鶏が元になっていると思われるが、日本では鶏肉も大きいし、さっぱりいただけるのであるが、辣子鶏はシャレにならないほど辛い。しかも肉は骨つき肉をぶつ切りにしたもので、歯でこそいで食べる感じ。口に残った骨はテーブルの脇にペッと豪快に吐き出すと、いかにも中国人っぽい。写真の辣子鶏はまだマシな方で、ひどい店になると唐辛子の中に肉が埋もれているようなものも。この辣子鶏が食べられるようになると、大抵の四川料理は問題なく食べられる。

 

●よだれ鶏

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口水鶏

 日本語訳が的確であることが証拠に(口水はよだれのこと)、本場の味を再現しているものがほとんど。塩水でゆでた鶏肉を一口大に切って、ラー油にぶちこんだ料理であるが、日本の場合、辛さを抑えるためか漬け込みがあまい場合が多い。四川では漬け込みも完璧なので、とてつもなく辛い。なお、この口水鶏と夫婦肺片(煮込んだ牛のモツをラー油に漬け込んだ料理)が四川料理のオードブルのようなもので、冷菜といって注文するとすぐ出てくる。したがって、注文時には口水鶏か夫婦肺片のどちらかを注文し、舌を辛さと痺れに慣れさせておいてからメイン料理を味わうというのが正しいスタイルだ。

 

 なお、ほか四川料理っぽい定番料理としてエビのチリソース炒めがあるが、これは完全に陳健民さんのオリジナルで、四川料理としては存在しない(そもそも四川で海のエビを使った料理があるハズがない)。なんせ、中国人はエビチリは日本料理であると認識しているくらいなのだ。ぜひ、エビチリ以外の四川料理を現地で味わい、日本の味と比較してほしい。

www.kyounoryouri.jp

 

<今日の中国語>

麻婆豆腐(má pó dòu fǔ)マーポードウフ

回锅肉(huí guō ròu)ホイグォロウ

担担面(dàn dàn miàn)ダンダンミェン

辣子鸡(là zǐ jī)ラーズージー

口水鸡(kǒu shuǐ jī)コウシュイジー

 

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