アラウンド・チャイナ

ガイドブックにはあまり載らないニッチな中国旅行指南

蘭州が世界に誇る蘭州ラーメンを本場&神保町で食べよう!

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馬子禄牛肉麺の蘭州ラーメン

 蘭州には見るべきものが特にないという話を前回書いたが、食べるものは別だ。そう、ここ蘭州には中国中にその名を轟かせる蘭州ラーメン(中国では蘭州牛肉麺と呼ぶ)があるのだ。なぜ蘭州ラーメンが有名かといえば、理由は単純で、どの街にも必ずといっていいほどあるからだ(筆者は中国中、いろいろ訪ね歩いたつもりだが、蘭州ラーメン屋がない街を見たことがない)。蘭州ラーメン屋といえば、大抵回教徒が家族で店を営んでいて、厨房をのぞくと、およそ理解不可能な言葉が飛び交い、その横を子供が走り回ったり、赤子をおんぶした女性が料理をしていたりする。

 そんな蘭州ラーメン屋の看板メニューは牛肉麺か刀削麺であるが、他にもチャーハンや回鍋肉などの料理も提供してくれる(ただし、使う肉は牛肉)。店内でも食えるが、持ち帰ることも可能で、恐ろしいほど薄いビニール袋に商品を入れて渡してくれることが多い。引っ張ると簡単に切れてしまうので、熱いのを我慢し、手のひらでのせて運ばなくてはいけない。

 と、ここまでは全国各地の蘭州ラーメン屋の話であるが、本場・蘭州の蘭州ラーメン屋は事情が異なる。蘭州の蘭州ラーメン屋には牛肉麺しかない(刀削麺すらない)。さらにラー油がトッピングされているのはデフォルトだし、注文時に麺の細さをオーダーしなければならない。すなわち、蘭州の蘭州ラーメン屋は、巷の蘭州ラーメン屋とは別物だと思う必要がある、ということだ。

 ということで本場の牛肉麺を求めて、老舗として有名な馬子禄牛肉麺(mǎ zǐ lù niú ròu miàn:マーズールーニュウロウミェン)に突撃してみた。

 不覚だったのは、ほとんど写真を撮るのを忘れたということ。残っているのは冒頭の料理写真1枚のみ。これはブログとしてどうか? ともかく、できる限り、文章で当日の模様を再現してみよう。

 馬子禄牛肉麺は黄河のほど近く、大衆巷という細い路地にある。

 筆者が訪れたのは朝7時くらいと、メチャメチャ朝早くだったのであるが、恐ろしいことに店は既に開店していて、中は多くの人でごった返していた。老舗というよりも、なんか学食のような雰囲気だ。駅の切符売り場のような小窓が空いているところにおばさんが座っており、そこで注文するのだが、なんせメニューが牛肉麺しかないので、ただ数を伝えるのみ。昔の駅の切符売り場のように、不愛想に金を受け取り、お釣りを投げて寄越す。細さを伝えようとすると、厨房に直接言えとのこと。走り書きされた伝票を持って厨房に向かう。

 厨房ではもらった紙を差し出しながら、「二細」と伝えるが、きちんと伝わったのか不安な早さで麺が出てくる。牛肉が乗っていないので、それを伝えると、牛肉は別売りとのこと。では牛肉麺という名は一体なんだ、と少々腹立ちを覚えつつ、再び売り場に向かい、牛肉を注文する。なんだか、とっても面倒臭い。

 肝心の味はと言えば、確かに美味い! ただ、店が混みすぎちゃって落ち着かないので、早々にかっこんで退散したという次第。ね、写真撮り忘れるのもわかるでしょ?

 しかしながら、我ながらひどいレポートだ。なんせ味の感想が「美味い」しかない。これでは「おにぎり」の大泉レポートと一緒ではないか。

www.htb.co.jp

 といっても肝心の味は、もう忘れちゃったし…と途方に暮れていたときに、ふと気づいた。馬子禄牛肉麺って東京にもなかったっけ?

lanzhou-lamian.com

 ありました。しかも神保町に。ここなら写真も撮れるということで、今回はアラウンド・チャイナを逸脱し、東京の馬子禄牛肉麺に行ってきました。

 さて、東京の馬子禄牛肉麺は神田古本街のど真ん中に位置。神保町の交差点から靖国通りを東に進み、書泉グランデをすぎたあたりといえば、わかりやすいか。

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店の前に列を発見。見上げると蘭州拉麺の文字

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馬子禄牛肉面の文字。面を簡体字表記しているのはこだわりか

 東京で蘭州ラーメンの看板を見ると、ちょっと感慨深い。しかも、本場同様・清真とハラールを守っているところにこだわりを感じる。清真についての説明は過去ログをチェック。

www.morientes.jp

 5分ほど並んで店内へ。やっぱり麺系の店は回転率が早い。まずはレジに行くのは本場と一緒だが、蘭州では厨房に伝票を渡して、料理を受け取り、自ら席まで持ってくるというファーストフード方式なのに対し、東京ではレジで麺のタイプやトッピングなどを注文し、席まで案内してもらう方式。麺のタイプは9種類もあって、選ぶのが楽しい。本場でもこんなあったのだろうか(全然知らなかった!)。

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さまざまな麺のタイプを選べる

 今回は「定番」というキャッチコピーに惹かれ、平打ち麺である「韮叶(jiǔ yè:ジューイェ)」をチョイス。 韮は韮菜(jiǔ cài:ジューツァイ)でニラのこと、叶は葉の簡体字で、つまりはニラの葉っぱのサイズの麺という意味だと思われる。席に座ると、エプロンが必要か聞かれるので、「はい」と頷くと持ってきてくれる。こういったサービスは日本ならではで、至れり尽くせりだ。

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提供される紙エプロン。なかなかしっかりした作りで感動

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店内はそれほど広くはない。ただ清潔感があるのは、さすが日本

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オープンキッチンで麺打ちの様子も見られる

 さて、料理はあまり待たされることなく出てくる。ネギが小鉢に入れられているのは、口臭を気にする人向けのサービスか。ラー油がたっぷり入っているのは、本場・蘭州の牛肉麺と同じ。見た感じ、とても上品で、食欲をそそる。

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中国では考えられない、お盆に乗ったスタイルで提供

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ニラの葉とはよく言ったもの。スープに程よく絡んで絶品!

 麺を一口すする。うん、懐かしい味!日本で食べる中華って、どうしてもローカライズされちゃって、本場の味からかけ離れてしまうことが多いが、この味はきっと中国人も納得のはず。ラー油はたっぷりだが、牛出汁のスープが濃厚のため、辛さよりも先に旨味がくる。絡みもしっかり聞いているので、どんどん食べられてしまう。

 感心したのは本場の味を再現しつつ、本場よりも遥かに高い品質を実現していることだ。馬子禄の味は忘れてしまったため、一般の蘭州ラーメン屋との比較になってしまうが、牛肉はペラペラの紙みたいではなく、しっかり牛肉でチャーシューのような食感を実現しているし、スープも中国の店では化学調味料特有のピリピリ感が舌を襲うが、先述のように味に深みがあるので、ラー油入りにもかかわらず、食後にごくごくといけてしまう。また、これぞアイデアと思ったのが大根だ。大根入りの牛肉麺など、これまで食べたことはないのであるが、味がしっかりしみていて、いいアクセントになっている。麺の間に大根を挟むと、風味も変わるし、より美味しく食べられる気がする。

 正直、最初は牛肉麺に950円!と思ったのは事実だが(中国では大抵10元≒150円くらいで食べられるので、ちょっぴり抵抗感がある)、ここまでクオリティの高いものを、しかも本場の味を再現しながら提供してくれるのだからアリだと思う。昔、中国に住んでいたという人は、ぜひ味わいに行ってほしい。

 

 

 <DATA>

马子禄牛肉面

交通:蘭州駅そばにある海天新都からバス137路で永昌路北口下車、徒歩約5分(400m)

時間:6:30-14:30

goo.gl

馬子禄牛肉面神保町店

交通:都営新宿線神保町駅A7出口より、徒歩約3分(240m)

時間:11:00-15:00/17:00-20:30

goo.gl

 

<今日の中国語>

和气(hé qi)ホーチー:愛想。不をつけて不和气だと愛想がないという意味になる

二手书(èr shǒu shū)アールショウシュー:古本。中国語で古本は古代の本の意味になってしまう

围裙(wéi qún)ウェイチュン:エプロン。紙エプロンは纸围裙(zhǐ wéi qún:ジーウェイチュン)だが、「有没有纸围裙?」なんてフレーズを覚えても、まず無意味だ

 

 

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