陸の孤島に美女の墓。安徽省霊壁へ虞美人に会いに行く!
まずは訂正記事から。先週、公開した「好き者たちの夢の跡。夫差が美女を囲った霊岩山で浮世を想う」にて、中国四大美女の中に覇王・項羽の妻である虞姫(虞美人)を誤って入れてしまった(正確には呂布の妻・貂蝉と虞美人を勘違いしてしまった記述をした)。心よりお詫び申し上げます。
なぜ、そんな間違いをしたかといえば、ひとつに大して三国志に興味がないということと、もうひとつに『覇王別姫』の主役である虞姫が中国四大美女に入っていないわけがないという思い込みにある。その後、調べてみたが、虞姫は四大美女どころか十大美女にもエントリーされていないという衝撃的事実が判明(原文は中国語のみ)。
なるほど「覇王別姫」の印象が鮮烈な虞姫であるが、「史記」では垓下で劉邦の軍に取り囲まれるくだりで突然登場するだけの人物であるし、他の美女のように男を惑わすようなエピソードもない。つまりは項羽ほどの男に愛されたのだから、美人だったんだろうな的な印象しかないのだ。
この虞姫、実に謎の多い人物で、出生もわからなければ、最期もよくわかっていない。項羽を生き延びさせるため、その足手まといにならぬよう、剣の舞を披露しながらその剣で自ら自害するというのは、あくまでも京劇の中のお話。項羽が殺したという説もあれば、ひっそりと戦場から脱出して生き延びたという説もある。ただし、墓のある場所はわかっている。今の安徽省宿州市霊壁県というところだ。
この霊壁県、垓下古戦場からは約32kmも離れているから、首を切ったのちに、ふらふらして辿り着くには遠すぎるし、この地の伝説にあるように、虞姫の最期を悲しむ人が運んだにしても、やっぱり遠すぎる。実は垓下古戦場自体が、今の場所ではなく、霊壁にあったとも言われており、そっちの方がまだ信ぴょう性がありそうだ。
ということで虞姫の墓を見るために霊壁に向かった。霊壁は陸の孤島と呼べるほどアクセス手段がなく、高鉄の宿州東駅よりタクシーをチャーターしても片道約1時間もかかる。距離を聞いて、ちょっと引いたのであるが、安徽省は物価が安いからか、タクシーの運転手の言い値はお手頃価格で、お値段以上。
ということで、ブルジョア気分で出かけた。さて、向かった霊壁は、中国では奇岩の産地として有名らしい。向かう道すがら、いくつも石屋を見かける。
あとは、ひたすら田園地帯が続く。こうして到着したのが虞姫文化園。僕が訪れた当時は、ちょうど虞姫の墓のまわりを観光地化すべく、建物や池などを建設中であった(現在はすでに完成している)。
ちなみに虞姫の墓は円墳で、墓の前には「西楚覇王霊姫之墓」という墓碑が建てられている。
アクセスに苦労したぶんだけ、喜びもひとしお。司馬遼太郎ファンの人は、できれば垓下古戦場とセットで訪れたい。
<DATA>
虞姬墓
交通:宿州東よりタクシーで約51分。
料金:30元
時間:8:00-18:00
<今日の中国語>
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