アラウンド・チャイナ

ガイドブックにはあまり載らないニッチな中国旅行指南

ようこそ呉服の故郷へ!蘇州でシルク&刺繍の歴史を知る!

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呉服として知られる蘇州のシルク

 台風襲来に父親の手術といろいろなことが重なり、更新がしばらく途絶えてしまった。申し訳ないです! 気を取り直して、続けたいと思います。

tenki.jp

 さて、蘇州はかつて「呉」と言ったが、この呉と日本はなにかと縁がある。例えば、漢字の読み方のひとつに「呉音」がある。

 脱線を覚悟して話を続けるが、漢字の読み方には、「呉音」「漢音」「唐音」の3種があるのは昔、学校で習った通り。例えば、「行」という時はそれぞれ、次のように読む。

・呉音「ギョウ」※行列(ギョウレツ)、行商(ギョウショウ)など

・漢音「コウ」※行動(コウドウ)、銀行(ギンコウ)など

・唐音「アン」※行灯(アンドン)など

 中国語をかじっている人ならわかると思うが、「行」の中国語の発音は「háng:ハン」または「xíng:シン」。つまりは「アン」という唐音の発音は、現在の中国語の「ハン」に限りなく近いことがわかる(とはいえ、中国語で行灯は残念ながらxíng dēng:シンデンと読むのだが)。ちなみに唐音が日本に入ってきたのは鎌倉時代で、中国で言えばの時代の話。あれ、唐音っての時代ではないの?と思うだろうが、唐の時代に入ってきたのは漢音だ。なんだか、すごくややこしい。

 で、呉音はといえば、漢字の伝来と共にもたらされた、最も古い漢字の読みだ。日本に漢字が伝来したのが3世紀後半だから、ちょうど中国は五胡十六国の時代。長江以北は異民族に支配され、漢民族は南に押しやられていた。このことから、この地域から伝わってきたということで、後年、呉音と呼ばれるようになったらしい。とはいえ、本当に江南から漢字が伝わってきたかと言えば少し眉唾で、僕も少し調べたことがあるのだが、当時の中国の発音よりもむしろ古朝鮮語に近い。漢字は中国から朝鮮半島を経て、仏教と共に伝来したから、どうやら当時の朝鮮語の発音を日本語っぽく読んだ(英語をカタカナで言い表すように)というのが正しい気がする。

 さて、脱線終了でここからが本題。「呉」のつくものでもうひとつ、日本に多大な影響を与えたものがある。「呉服」だ。呉服と言えば、和服とどう違うの?と思うだろうが、綿織物や麻織物を「太物」というのに対し、絹織物を「呉服」といって区別した。和服を扱う店を「呉服屋」と呼んだのも、和服の最高品質のものを扱っている店ということから、そう呼ばれたらしい。

chigai-allguide.com

 そして、この呉服の原料である絹は長らく中国からの輸入に頼ってきたと言われる。日本でも古くから養蚕業が盛んであったが、その品質は悪く、高級品は中国産と相場が決まっていたらしい。中国において、古くから養蚕業が盛んな場所こそ、呉こと蘇州であり、古くは技術者を招聘し、その技術の導入を試みたこともあったようだ(その技術者を祀ったのが大阪池田市の呉服神社だ)。

kureha-shrine.com

 蘇州では、織物だけでなく刺繍技術も発展し、それは西陣織にも多大な影響を与えたと言われているし、倭寇が蘇州に出没したのも、この絹織物が目当てだったという説もある。そこで、今回は本場・蘇州の呉服を学べるスポットを紹介していこう。

 

●蘇州絲綢博物館(シルク博物館)

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http://www.szsilkmuseum.com/a/zixun/xinwendongtai/2016/0821/44.html

 シルク専門の博物館。検索してみたら、近代的な建物になっていて驚いた。ちなみに、僕がいた時の博物館はこんな感じ(↓)。

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昔のシルク博物館

 見るからに崩れ落ちそう…。でも、目の前に駐車場があって便利だったんだけどなー。ちなみに中はそんな変わってなさそうだったので、昔の写真を使って紹介してみる。

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黄帝の妻で絹と織物の製法を築いた嫘祖の像

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古代の貴重なシルク製品を多数展示

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出た!中国の博物館といえばジオラマ。今はあるか不明

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土産店のスペースが一番大きい(かつては)

 シルク博物館は北寺塔という蘇州を代表する観光地の目の前に位置し、拙政園や蘇州博物館にもほど近く、また蘇州を代表する繁華街である観前街も徒歩圏内にあるというロケーションにある。入場料もタダなので、観光に行った際は、ぶらりと訪れるといい(ただし、シルクや刺繍製品はここで買わないほうがいい)。

<DATA>

苏州丝绸博物馆

交通:蘇州駅から地下鉄2号線で北寺塔下車、徒歩約9分(660m)。

料金:無料

時間:9:00-17:00(月曜休館)

goo.gl

 

●中国蘇繍芸術博物館

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環秀山荘の横にひっそりとある中国蘇繍芸術博物館

 こちらは刺繍専門の博物館。蘇州刺繍には興味があるけど、蘇州に滞在する時間がないという人にオススメ。狭い博物館なので、10分もあれば全部みられる。

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清代の皇帝の衣装

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こちらは孫文の妻・宋慶齢が着ていた服だとか

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刺繍作品がずらりと展示

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モナリザを刺繍で再現。なかなかの力作

 蘇州随一の繁華街・観前街から徒歩圏内とロケーションはそれほど悪くない。なにより、世界遺産に登録された蘇州園林・環秀山荘の敷地内にあるのがポイント。環秀山荘はいまいちマイナーな庭園だが、ここの太湖石による築山は、おそらく中国一の規模。博物館よりも、むしろこっちを見ておきたい。

<DATA>

中国苏绣艺术博物馆

交通:蘇州駅から地下鉄4号線で察院場下車、徒歩約12分(940m)。

料金:5元

時間:9:00-17:00

goo.gl


●中国刺繍芸術館

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刺繍ストリート・繍品街にある中国刺繍芸術館

 もうひとつ刺繍専門の博物館を紹介したい。この「中国刺繍芸術館」だが、前者2つと異なり、かなりロケーションは悪い。なんと駅からバスに乗ること1時間強。遥々、太湖の湖畔まで行く必要があるのだ。

 ほぼ蘇州と無錫の中間地点に位置。タクシーで飛ばしても45分くらいはかかる。

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巨大な刺繍がお出迎え

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歴史的価値というよりも、様々な刺繍が見られる施設だ

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やはりジオラマはデフォ。刺繍をする女性の図

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館内では実際に刺繍をする様子も見ることができる

  しかし、なぜ、こんな場所にあるかといえば、繍品街という刺繍専門店が立ち並ぶストリートがあるからだ。蘇州の人が刺繍製品を買い求める場合、観前街を始めとする旧市内では高いし、観光客向けの粗悪な製品が多いため、繍品街にまで足を運ぶ。ここなら専門店なので種類も多いし、価格も良心的。刺繍製品が欲しいという人は、博物館見学ついでに訪れるといい。

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100軒以上の専門店が立ち並ぶ繍品街

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店内には様々な刺繍製品が並ぶ

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なんと作業は店内で。刺繍の様子をタダでじっくり観察できる

 ちなみにオススメは、表と裏で刺繍の図柄が異なる両面刺繍。この技術は、正直、すごいと思う。

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中国刺绣艺术馆

交通:蘇州駅南広場からバス快線3号で繍品街下車、徒歩約11分(880m)。

料金:30元

時間:9:00-16:30

goo.gl

  

<今日の中国語>

丝绸(sī chóu)シーチョウ:シルク。シルクロードは「丝绸之路(sī chóu zhī lù:シーチョウジールー)」

刺绣(cì xiù)チーシュウ:刺繍

养蚕(yǎng cán)ヤンツァン:養蚕

 

 

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