アラウンド・チャイナ

ガイドブックにはあまり載らないニッチな中国旅行指南

先人たちの日中友好の努力を知る!鑑真ゆかりの大明寺を参拝!

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揚州・大明寺

 前回、紹介した痩西湖の北隣に、とある仏教寺院が立つ。大明寺(dà míng sì:ダーミンスー)といって隋代に建てられた古刹だ。隋の文帝(楊堅)の誕生日を祝し、仏舎利を納める塔を全国に30座建てたうちのひとつで、当時は塔の名前をとって栖霊寺と呼ばれた。

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牌楼に書かれた栖霊遺址の四字は清末の書家・姚煜によるもの

 この寺が日本にとって特別な意味を持つのは、唐代、この寺の住職を鑑真(jiàn zhēn:ジエンジェン)が務めていたことだ。鑑真といえば、律宗の日本総本山である唐招提寺を開いた人であり、日本仏教に授戒制度を持ち込んだ人物。当時、日本の仏教界といえば、自分で僧を勝手に名乗って僧職に就く、いわゆる私度僧が増殖しており、国を仏教で治めようとしていた天皇家にとっては頭痛の種であった。そこで正式な戒律制度を導入するためにも、本場・中国で戒律を授ける資格を持った高僧が必要だったのである。そこで白羽の矢が立ったのが当時、南山律宗の継承者で4万人以上の僧に授戒した経験を持つ鑑真だったわけだ。

↓ 鑑真の詳しい情報はウィキペディアで

ja.wikipedia.org

 その後は、皆さんご存知のように、六度もの渡船の末、ようやく日本に辿り着くわけであるが、日本仏教に大きく寄与した鑑真は、日本のみならず、実は中国でもかなり知られている。その理由は国内での実績というよりも、やはり日本での知名度から。いわば、日中友好のシンボルのような扱いを受けているのだ。

 実際、日本人の鑑真信仰は今も深く、多くの日本人がこの大明寺を参拝するためだけに揚州に足を運ぶ。境内の看板には日本語が併記され、唐招提寺から贈られた提灯の火は日中友好の証として消えることのないよう管理されている。中国では珍しく親日的な場所だと言える。

 

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蘇北(江蘇省の長江北部)の代表を意味する淮東第一観の文字

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大明寺の本殿である大雄宝殿

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仏舎利塔である栖霊塔。唐代に焼失し、1993年に再建された

 大明寺には鑑真の功績を讃える鑑真記念館が併設されている。この記念館の建設を指示したのは周恩来で、完成したのは1973年のこと。なんと日中国交正常化の翌年のことである。実はこの記念館建設が計画されたのは1963年で、鑑真が亡くなってからちょうど1200年の節目にあたる年であった。それから10年をかけて建築され、その間に国交正常化を果たしたのであるから、周恩来の深慮たるや恐るべしと言える。

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鑑真記念館の入り口。単なる建物ではなく、鑑真専用エリアが設けられている

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入口に建てられた鑑真の銅像。旅装であり、旅の苦難を伝えている

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鑑真記念館。東大の建築様式を模して作られた

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記念館内に安置されている鑑真像は日本から寄贈された唐招提寺のレプリカ

↓ 唐招提寺の鑑真像

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By OGAWA SEIYOU(1894-1960) a famous photographer in Japan} - Collected papers on Tōshōdai-ji temple, KUWANA BUNSEIDO Books., 1949-02-20, KYOTO, Japan, パブリック・ドメイン, Link

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鑑真記念館前の提灯は唐招提寺から寄贈されたものだ

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鑑真記念碑の文字は郭沫若によるもの

 「鑑真和尚記念碑」の文字を書いた郭沫若は亡命中に千葉県市川市に住み、日本人の奥さんを娶っている、日本と縁の深い人。文学者でもある郭沫若の文字は、中国中のいたるところで見られるが、この鑑真和尚記念碑の文字ほど、日本人の心の琴線に触れるものはないかと思われる。

↓ 日本に住んでいた時代の郭沫若の家が記念館として保存されている

www.tekona.net

 今、日本と中国の関係は、対韓国ほどではないものの、未だ微妙であることは違いない。しかし、ここ大明寺に来ると鑑真をはじめ、周恩来に郭沫若と先人たちの日本への思いやつながりというものを再認識することができる。こんな時代だからこそ、大明寺を訪れるのは価値があることだと思う。

 

 <DATA>

大明寺

交通:揚州駅からバス旅遊専線(旅行専用路線)で大明寺下車、徒歩約4分(250m)

料金:45元

時間:7:45-16:30

goo.gl

 

<今日の中国語>

象征(xiàng zhēng)シャンジェン:シンボル

院落(yuàn luò)ユェンルオ:寺院の境内

邦交正常化(bāng jiāo zhèng cháng huà)バンジャオジェンチャンファ:国交正常化

 

 

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