アラウンド・チャイナ

ガイドブックにはあまり載らないニッチな中国旅行指南

杭州からバスで2時間!最澄修行の地「天台山」は今も秘境にあった!

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天台山国清寺

 早いもので、このブログも連載10回目。どこを紹介しようか悩んだが、せっかくなら連載1回目と関連がある場所がいいのではないかと思い、ここに決めた。場所は浙江省天台県だ。

 というと日本の都道府県のような大きな行政区を想像しがちだが、中国の県は日本で言えばに相当する。つまり、中国で県がつく地名といえば、相当な田舎であると考えたほうがいい。

 僕が天台県を訪れたのは、かれこれ10年以上も前だが、当時はバスターミナルとは名ばかりのバス停の標識がひとつあるだけで、まわりに店どころか人家もまばらであった。今は少しましになったようだが(百度地図のストリートビューを見ると、近代的なターミナルビルが完成している)、肝心の目的地はというと人里離れた山中にあり、佇まいは昔のまま。この辺りでは有名な観光地であるハズなのに、未だに直通バスすら通っていないようだ。

 少々もったいぶってしまったが、実はここ天台県は第1回目で紹介した空海のライバル、最澄が開祖となった天台宗発祥の地なのである。もともと天台宗は智顗という高僧が開いた宗派で、平安時代に最澄がこの地で修行し、日本で開いたとされる。天台宗といえば浄土宗、浄土真宗、法華宗、臨済宗、曹洞宗など、日本仏教の礎となった宗派だから、日本仏教の源泉は、この中国の辺鄙な山の中だと言って過言ではない。

 

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 さてバス停を降りると、うっそうと木が茂った山道を少し登ることになる。やがて「隋代古刹」と描かれた黄色い山門が現れるが、そこが中国天台宗の総本山・国清寺の入り口となる。隋代と描かれているが、現在の建物は清・雍正帝の時代(それでも1734年!)に作られたもの。黄色に塗られているのは皇帝に守られていることを示すもので、確かに中国の寺はみな黄色い。

 園内はなかなか広い。そして、観光地としては辺鄙な場所なので、あまり手が入ってないのがまたいい。なんせ隋梅と呼ばれる、隋代からある梅の木があるのだ。隋の成立は589年だから樹齢1430年!日本で言えば、聖徳太子の時代から生えていると考えると、なかなかスゴイものがある。

 なお、天台山は風景区(中国政府が指定する観光地)になっていて国清寺のほか、石梁飛爆(滝)など見所が多い。もっとも交通手段がないので、滝を見たければ、タクシーをチャーターしてしまったほうがいい。たぶん、2-300元出せば、半日くらいはチャーターできるハズだ。

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石梁飛爆。ほかにも様々な滝が見られる。

 ところで、隋ならびに唐は北方民族が建てた国で、その頃の中心地は西安や洛陽など全て北方の都市。今でも天台県はかなり田舎だが、当時はさらに輪をかけて田舎だったハズだ。なんで、そんな田舎に最澄は修行に来たのだろうか?

 思うに、単に地理的な理由だったと思われる。当時、日中を結ぶルートは福岡から寧波に行く南ルート(鑑真もこのルートで日本に来た)が一般的で、港のある寧波から天台山は136km程度(1日半で着く距離)にすぎないのだ。一方で、遠く都のある西安で修行をしたのが空海だった。流行の最先端は首都にあるというのは今も昔も同じで、その当時の仏教のトレンドが「密教」であった。密教をめぐる空海と最澄の仲違いは、この修行した場に原因があったのだ。

 最澄は密教について空海に対して教えを請い、対して空海は冷ややかだったというが、空海にとってみれば「田舎仏教を学んだ最澄に何がわかる」という思いだったのだろうし、最澄にしてみれば西安を知らないだけに「西安も天台も同じ中国ではないか」という気持ちがあったのだと思われる。そんな田舎仏教を育んだ天台は、今も昔と変わらず、ゆっくりとした時間が流れている。

 

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 <DATA>

国清寺(guó qīng sì)グオチンスー

交通:杭州北バスターミナルまたは寧波バスターミナルより約2時間で天台バスターミナルへ。バスターミナルよりタクシーに乗車。目安は20元

時間:8:00-17:30

料金:5元(ほか天台山入山料10元、石梁飛爆60元)

goo.gl

 

<今日の中国語>

长途汽车(cháng tú qì chē)チャントゥチーチョー:長距離バス

密教(mì jiào)ミージャオ:密教。ちなみに仏教は佛教(fó jiào)フォージャオ

乡下(xiāng xia)シャンシャー:田舎。ちなみに都会は城市(chéng shì)チェンシー

 

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